「五感がトキメク」
幻の豚・TOKYO Xの美味しさを届けるために
東京都生産者

大冷害を乗り越え、トウキョウXとの出会いへ
22歳で就農し、農業研修などを経てアイガモ農法を始めました。ちょうど1993年の大冷害の年で、記録的な寒夏で米が採れず、政府が東南アジアから米を緊急輸入した年にあたります。当時は米の他に野菜なども作っていましたが、計画通りにいかず収支がマイナスになる時期もありました。米や野菜は収穫時期が限られますが、豚は1年を通して出荷できるので、打開策として養豚に注力するようになりました。
そんなとき、東京都が「トウキョウX」の開発を始めました。条件が良く、流通もしっかりしていて経営の先が見通せて面白いのではと直感して、早い時期に、それまで飼っていた品種から切り替えてトウキョウXの生産にシフトしました。

ブランドの価値を守る生産者組合の結成
トウキョウXの立ち上げにあたって生産者組合も結成されました。生産者が10人いたとして、それぞれが勝手に作ってしまうと10通りのトウキョウXが生まれてしまい、ブランド価値を損なうリスクがあります。そのため、組合として統一し、ひとつの価値観やルールが必要だと考えました。特に東京のように小規模な農家しかいない地域では、グループ化して共同出荷体制をとることが不可欠でした。
トウキョウXには「都市型養豚」という表現がありますが、これは東京に養豚業を残していこうという強い思いが込められていました。発足当初は都内だけで10人の小規模農家が参加していましたが、現在は高齢化などの影響で生産者数は減少してしまいました。
「幻の豚」の美味しさと飼育へのこだわり
「幻の豚」とも呼ばれるトウキョウXの一番の特徴は、脂の融点が非常に低く、肉のきめが細かいことです。一方で、おいしさを極限まで求めたために弱点もあって、飼育にはとても気を使います。換気のほか、湿度維持のため豚舎ではシャワーに近いミストを行っています。

都市型養豚の強みを生かした直売
トウキョウXに切り替えたころに近隣の道の駅の開業が決まり、直売する機会を得ました。都市農業の強みは直売ですが、畜産は流通の仕組みがあるので直売はなかなか難しい。私は自分で出荷した豚を精肉にして買い戻して、道の駅などに週に1、2回卸しています。
店頭にいると消費者の方とお話しすることがあって、「ちょっと高くて申し訳ないですね」とかって声を掛けるんですが、お客様からはたいがい「こんなにおいしいんだから、この価格で十分ですよ」というお話も聞きますし、「これ食べ始めたら他の肉は買えなくなっちゃう」と言われたりします。おいしくてファンになっていただけている、自分で作るものに対して評価いただける形で販売することは、仕事のモチベーションにつながっています。




